鼻汁の見分け方
患者さんからよく聞くのが「風邪の鼻汁なのか、それともアレルギーの鼻汁なのか分からなくて。。。」という言葉。
言われてみると確かにそうです。
耳鼻科を受診する前に内科や小児科へかかった患者さんが風邪の鼻汁なのにアレルギーの薬が処方されていることが多々あります。耳鼻科医ではないとは言え、医者でさえ見分けがつきにくいくらいですから医療従事者でなければなおのこと区別しようがないと思います。
風邪をひいて最初の1〜4日間くらいはアレルギー性鼻炎のような水みたいな透明でサラサラした鼻汁(水様性鼻汁と言います)が出ます。この水様性鼻汁は出初めて1〜4日間くらい経つと自然に止まるか、細菌感染を併発して色がついたり粘っこい鼻汁(膿性鼻汁と言います)へ変化します。
アレルギー性鼻炎であれば何日間経とうが何週間経とうが水様性鼻汁のままです。
膿性鼻汁が出ていれば診断は難しくありませんが水様性鼻汁しか出ていない時には風邪のひき始めなのかアレルギーなのかを正確に診断するのは容易ではありません。
特に9〜10月は日中と朝で寒暖差があるため風邪をひきやすい季節でもありますし、ハウスダストやダニの他に、ヨモギやブタクサなどの花粉でアレルギー性鼻炎をきたしやすい季節でもあるので判断に迷うことがあります。
辻堂たいへいだい耳鼻咽喉科での取り組み
そこで当院では風邪の鼻汁なのか、それともアレルギーの鼻汁なのか見分けるため幾つかの取り組みをしています。
1)患者さんとの対話
患者さんの訴えを聞くだけでなく私の方からも幾つか質問をさせて頂いています。
発熱、のどの痛み、倦怠感や身体の節々の痛みなど他の症状はなかったか、周囲に風邪っぽい人はいなかったか、毎年この時期になると同じような鼻汁は出ていないか、etc。
自分一人で問診票を書いている時には気付かなかったことも、私から改めて質問を受けることで「そう言えば、、、」と貴重な情報を思い出しそれで診断に繋がることも少なくはありません。
2)内視鏡で鼻内をチェック
一見すると水の様な透明でサラサラした鼻汁でも内視鏡を使って丁寧に鼻汁や鼻内を観察すると色のついた鼻汁や、粘り気のある鼻汁が見つかることがあります。ですので成人の場合はもちろん、子供も可能な限り内視鏡でチェックさせてもらっています。
内視鏡で撮影した画像はモニターへ写しますのでご自身の鼻の状態を目で見て確認することが出来ます。
3)鼻汁を吸引して観察する
成人や大人しく出来る子供なら内視鏡で観察することも出来ますが、大抵の子供は診察を受けるだけでも怖くて怖くて我慢の限界です。そんな時には無理して内視鏡はしません。
代わりに実際に鼻汁を吸引してみます。
子供用の吸引器具は透明ですので吸っている鼻汁が器具の中を通る際にサラサラした透明なものかそれとも色や粘り気がついたものか分かることがあります。
4)アレルギー検査をしてみる
当院で実施しているアレルギー検査は皮膚に薬をつけて反応を見る検査です。これは検査結果が出るまで何日もかかる血液検査と違って10分少々で結果が出ます。
必ずしも反応がない=アレルギーは無い、と言うわけではありませんが、反応が出た場合はアレルギー性鼻炎の鼻汁かどうか判断するのにとても参考になります。
治療方法
色々と試しても結局判断に迷うことはあります。
1)風邪を疑った場合
判断に迷いながらも風邪の鼻汁を疑った場合、成人も子供もなるべく薬は処方せず鼻汁吸引か鼻をよくかむことをお勧めさせて頂いています。
私自身が「自分は薬は飲みたくないし、自分の子供にもあまり薬を飲ませたくない」という考え方なので最初の1〜4日間は薬を使わず自然治癒するか、膿性鼻汁へ変化するか経過をみてもらう様にしています。
もちろん、「鼻汁がダラダラ垂れて辛い、仕事にならない、日常生活に差し支える」といった方にはご相談のうえで漢方薬を処方しています。その時に一番よく使うのが葛根湯加川芎辛夷という薬です。麻黄(西洋薬で言うところのエフェドリン)が含有されており風邪のひき始めの水様性鼻汁に著効することがあります。
2)アレルギーを疑った場合
アレルギー性鼻炎を疑った場合は抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬を処方しています。
もしアレルギー性鼻炎ではなく風邪のひき始めであれば数日で自然治癒するか、膿性鼻汁へ変化しますので、もしそうなってしまったら申し訳ないのですが改めて受診してもらえればと思います。
鼻の調子が芳しくない方は診察の際に気軽にご相談下さい(予約はこちらから)。