体調が悪いので色々検査や治療を試したけど治らなかった、原因がハッキリしなかった.
そんな経験はありませんか?
実はその不調の原因が慢性上咽頭炎という鼻の疾患にあるかもしれません。
本当に鼻の疾患で全身の不調が起きるの?と不思議に感じる方もいらっしゃるでしょう。
その理由は後ほど説明します。
どんな不調が起こるのか?
慢性上咽頭炎で引き起こされる疾患や症状には以下の様なものがあるとされています。
・頭痛(片頭痛、緊張型頭痛)、顔の痛み
・起立性調節障害、浮遊性めまい
・肩こり、首こり
・耳下や顎周りの痛み
・全身痛
・耳管狭窄症、耳管開放症
・血管運動性鼻炎(俗にいう寒暖差アレルギー)
・後鼻漏
・のどの詰まった感じ
・のどに痰がヘバリ付く感じ
・嗄声
・舌痛症、慢性的なのどの痛み・のどの痒み
・慢性咳嗽
・痰に血が混じる
・過敏性腸症候群(下痢、腹痛、便秘)、胃もたれ
・IgA腎症
・胸肋鎖骨過形成
・ネフローゼ症候群
・掌蹠膿疱症
慢性上咽頭炎はまだ医学的に全容が解明された疾患ではありません。
ですので前述した症状や疾患の原因が全て慢性上咽頭炎で説明がつくわけではありません。
慢性上咽頭炎の他に原因となる疾患がある場合もありますし、慢性上咽頭炎の治療を受ければ不調が全て良くなるかと言うとそうではありません。
あくまでも今まで上に記載した疾患や症状で検査や治療をしたけど原因がハッキリしなかった、治らなかった、という様な人は選択肢の1つとして慢性上咽頭炎を疑って治療を受けてはどうか?という提案です。
慢性上咽頭炎で全身の不調を引き起こす理由
まず上咽頭というのは下の図に書いてある様に鼻の奥の突き当たりにあります。
ちょうど、口蓋垂(のどちんこ)の上のあたりにあります。
上咽頭の細胞には免疫に関与するリンパ球が多く含まれています。
ですので上咽頭そのものが免疫器官の役割を担っていて、例えばウイルス感染(風邪)があるとその影響を受けて炎症を起こしやすい部分なのです。
そして上咽頭の近くには血管やリンパ管が豊富に張り巡らされているため、炎症が血管やリンパ管を通じて全身へ回りやすいと考えられています。
その結果、IgA腎症などの病巣感染症を引き起こすとされています。
また、上咽頭は血管やリンパ管の他に神経繊維(主に迷走神経と舌咽神経)が分布しています。
舌咽神経はのどの知覚、迷走神経は内臓(喉頭、気管、心臓、胃、腸)の働きに関係している神経です。
そのため上咽頭に炎症があるとこれらの神経が刺激されてのどの症状が出たり、内臓の症状が出たりすると考えられています。
ではなぜ上咽頭に炎症が起きるのでしょうか?
それも現代の医学では未だ解明されてはおりません。
あくまでも私見ではありますが、原因ではないかと疑われているものとして「風邪をひいた」「身体の冷え」「のどの乾燥」「何らかのストレス」などがあります。
「身体の冷え」が原因の場合には肩こりや首こりを訴える方がとても多く、ヨガやシャワーなどで身体や首元を温めると一連の辛い症状が改善される傾向にあります。
この場合はBスポット療法に漢方薬の葛根湯など血流を改善させる薬を併用すると効果的なように思います。
「のどの乾燥」は特に夜間、口呼吸になることで就寝中にのどが乾燥して引き起こされることがあります。
鼻中隔彎曲症やアレルギー性鼻炎などで鼻の通りが悪い人に見られることが多いように感じます。
ステロイド点鼻薬やロイコトリエン拮抗薬(オノンやシングレアなど)を使うとマシになることがあります。
「何らかのストレス」に関しては運動すると調子が悪くなる人に当てはまるのではないかという気がします。
運動で調子が悪くなる人は持久走や自転車で長距離を走行した、と身体的に負荷のかかる運動をされていることが多い印象を受けます。
あくまでも私の推測でしかありませんが無酸素運動のように身体にストレスがかかるとそれが上咽頭に炎症を引き起こすのかもしれません。
どうすれば慢性上咽頭炎と分かるのか?
以前紹介した急性上咽頭炎(https://tsujido-3387.com/column_sick/column_sick-820/)であれば鼻内視鏡検査をすると下の写真の様に上咽頭に膿が付着しているのが分かるためすぐに急性上咽頭炎と診断がつきます。
一方、慢性上咽頭炎は鼻内視鏡で上咽頭を観察しても膿の付着はなく一見綺麗に見えることが多いです。
そこで辻堂たいへいだい耳鼻咽喉科では慢性上咽頭炎かどうかの診断には診断的治療を行なっています。
❇︎診断的治療というのは病気の治療をして症状が改善したらその病気でしたね、と治療した結果をもって病気の診断することを言います。
慢性上咽頭炎の治療
慢性上咽頭炎の治療である上咽頭擦過療法はかつてはBスポット療法という名称で呼ばれていました。
BスポットのBは鼻咽腔(びいんくう)の頭文字です。
最近では上咽頭擦過療法の英語訳であるEpipharyngeal Abrasive Therapyを略してEAT(イート)と呼ぶことが主流になりつつあるようです。
さて、Bスポット療法やEATと呼ばれる治療はどんな治療でしょうか。
実は下の図の様に鼻や口から綿棒を挿れて上咽頭をこするだけで済みます。
綿棒でこする時間は数秒です。
この綿棒には塩化亜鉛という薬を染み込ませます。
ですのでこする時に痛みを伴うことがあります。
Bスポット療法を提唱した先生は鼻から綿棒を挿れてこすった後、口からも綿棒を挿れてこすることを勧めています。
その口から挿れる綿棒ですが写真の様にちょっと先が太いのです。
。
これを口から挿れると反射でオエっとなる人が多いので辻堂たいへいだい耳鼻咽喉科では鼻から綿棒を挿れるだけにしています。
一応、口から挿れる綿棒も用意はしていますので希望する人がいれば鼻ものども両方することは出来ます。
私の拙い経験では鼻からのBスポット療法だけでも十分効果はあります。
どのくらいの頻度で通院するのか?
慢性上咽頭炎は一回治療しただけでも効果を実感できることが多いです。
私の経験では「劇的に良くなる」というよりかはどちらかと言うと「少し楽になった」程度の人が多いように感じます。
そして、少し楽になっても3〜4日くらい経つとまた元へ戻ることも多い、そんな印象を受けます。
特に後鼻漏を訴える人の場合は1ヶ月くらい治療をしてようやく、ということも少なくありません。
ですので辻堂たいへいだい耳鼻咽喉科では最初の1ヶ月間くらいは週に2回(3〜4日おき)のペースでBスポット療法をすることを勧めています。
それである程度良くなってきたら週に1回のペースにしてしばらく継続していきます。
仕事や家事や学業などで週に2回は厳しい!!
という方は相談の上、週1回から始めることも可能です。
✳︎当院ではじめてBスポット療法を受ける方は院長が診療をしている月、火、木の午後、金の午前、土、日でご予約下さい。
どのくらい治療すれば良くなるのか?
辛い症状がいつになったら治るのか?
これが皆さんの一番気になるところだと思います。
良くなるまでの期間はケースバイケースです。
早ければ週1ペースで治療をして1ヶ月後くらいにスッカリ良くなった人もいます。
ただしこう言ったケースは非常に少ないです。
早く良くなる人は発症から半年以内に治療を開始した人が殆どです。
発症してから1年以上経過していると良くなるまでに時間がかかることが多い印象を受けます。
個人差もありますが3ヶ月とか4ヶ月くらいかかって未だ道半ば、ということもあります。
良くなるまで時間がかかるものなので決して焦らないことが大切かと思います。
長く通い続けるのは大変かと思いますが根気強く一緒に頑張りましょう!
Bスポット療法の注意事項
耳、鼻、のど、といった耳鼻咽喉科で扱う部分の症状がメインであれば何も問題はないのですが、それ以外の症状や疾患は基本的に耳鼻咽喉科で扱うことがありません。
従って慢性上咽頭炎以外の原因があるかどうか鑑別が出来ません。
ですのでまずは専門医に診てもらって下さい。
専門医の元で種々の検査をしたり治療をしても良くならなかったのでBスポット療法を受けてみたい場合にはちゃんと主治医の許可をとってからにして下さい。
例えば、長引く咳(慢性咳嗽)の原因には肺癌や肺結核や喘息などがあります。
肺癌や肺結核や喘息は耳鼻咽喉科では診断が出来ません。
呼吸器内科の専門医を受診もせず、素人判断で『慢性上咽頭炎かもしれないのでBスポット療法を試そう』みたいな感じで来られるのは困ります。
お互いに不幸になるだけです。
耳、鼻、のど、以外の症状や疾患の場合は必ず当該科の専門医のところで相談してからにしましょう。
新型コロナウイルス感染の後遺症でBスポット療法を希望される方は保健所から療養期間の終了を告げられてから受診して下さい。
Bスポット療法をご希望の方は予約をお願い致します(ご予約はこちらから)